膀胱炎

膀胱炎

“おしっこをするとき痛い”

“下腹がむずむずして、おしっこが近い”

“おしっこが赤い、血尿みたい…”

“最近ちょっと疲れてたし…”

このような経験をされたり、こんな症状でお困りの方、まわりにいらっしゃいませんか?

「膀胱炎」に多い症状です。

わりとよくみかける膀胱炎ですが、しっかり治しておかないと、辛い痛みや高熱、さらには、腎盂腎炎などを引き起こす可能性があります。ご高齢の方では、命にかかわる状態になることもあります。膀胱炎の症状を把握し、早めに対応することが大切です。

少し詳しく、お話しましょう。

蔦

どんな症状?

膀胱炎の主な症状は、「何度もトイレに行きたくなる」、「排尿後に痛みがある」、「残尿感」、「尿が白く濁ったり、血が混じることがある」などです。
初期の膀胱炎の場合、トイレに行く回数が増えます。
1日10回以上もトイレに行ったり、排尿してもすっきりしない、残尿感が残る、尿が白く濁ったり、時には血が混じる血尿が出ることもあります。
また、排尿の最後の方や、排尿後に痛みを伴ってきます。

膀胱炎の痛みでよく言われるのが、“しみるような痛み”です。
膀胱の中の表面は、口の内側の粘膜のように柔らかい粘膜でできています。
風邪をひいてのどを傷めた場合、風邪の菌がのどの粘膜に付着し、感染すると粘膜を傷つけ、腫れて、痛みが出てきて、ひどい場合は出血することもあります。
膀胱炎の時も同じです。膀胱の中に菌が入り込むと、細菌感染によって膀胱粘膜が傷ついて膀胱炎になり、膀胱の内側が敏感になっているために起こるのです。
膀胱炎が軽い場合、自覚症状がないこともあります。特に高齢者などは、違う症状で尿検査をしたら膀胱炎だった、ということもよくある話です。

膀胱炎が悪化してくると、残尿感がひどくなり、何度も何度もトイレに行くようになります。
常に下腹部に違和感を感じ、はっきりとした痛みを感じることもあります。
さらに悪化すると、排尿時に焼け付くような痛みがあったり、残尿感はますますひどくなり、前述したように出血(血尿)をともなうこともあります。
膀胱炎がさらに悪化すると、腎盂腎炎や腎臓への感染が起こる場合があります。
膀胱炎の疑いのある症状が出た場合、早めに病院で受診しましょう。

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どんな人がなりやすいの?

膀胱炎は、男性よりも、小さい子からお年寄りまでふくめ圧倒的に女性に多いです。
理由は、まずは体の構造によるものです。
女性は男性と比べると、尿道の長さは、男性が14~18センチあるのに比べ、女性は、たった3~5センチしかありません。
おしっこがでる尿道口と膀胱の距離が短ために菌が膀胱の中に侵入しやすいのです。
つぎに、女性は尿道口と腟、肛門との距離が近いことも関係します。
私達の体の表面にはいつも目には見えない菌がたくさんいますが、大腸菌などの通常私たちの体によくいる細菌たちが入り込み、悪いことを引き起こすのです。

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原因は?

膀胱炎のほとんどは、細菌が感染することで、膀胱に炎症が起こります。
細菌の感染は、細菌が尿道から膀胱に侵入してくることで起こります。
いつもはおしっこを出すことで、入り込んできた細菌も洗い出されますし、膀胱は本来細菌への抵抗力をもっています。
しかし、疲労やストレスなどで体力が落ち抵抗力が弱くなると、普段は負けないような細菌に負けてしまい、膀胱内の細菌が増殖することで膀胱炎になります。
膀胱炎の原因となる細菌には、ブドウ球菌や大腸菌、セラチア菌、プロテウス、肺炎桿菌、腸球菌などですが、その中でも大腸菌が原因菌の80%前後を占めるといわれています。

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診察や検査はどんなことをするの?

まず、いつから?、どんな症状?、生活習慣は? などの問診を行います。
仕事や家事で、なかなか水分を取れない、自由におしっこに行けない、そのようなこともよくありますね。
その結果膀胱炎を疑われた場合、一般的に、まずは尿検査を行います。
尿検査では、試験紙や、尿沈査、尿細菌検査などがあります。
その他に、腹部超音波検査(エコー検査)、残尿測定、採血検査を行います。

この時、膀胱炎の検査の採尿するうえでの注意点は、中間尿を採取することです。
中間尿とは、尿が出始めてから、少し経った尿のことです。
出始めの尿には、膣などの白血球や細菌が混入しやすく、間違って膀胱炎と診断されてしまう場合がありますので、出始めの尿は採取せず、中間尿を採尿しましょう。

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治療法について

膀胱炎の治療方法は、原因や膀胱炎の種類、程度によって異なります。
軽度の膀胱炎の場合は、病院で診察を受けても、自然治癒で治していくことがあります。
排尿は、膀胱内に溜まった細菌を外に洗い流す役目があります。尿をたくさん作るために、多めに水分を摂り、どんどん排尿を促していただきます。
しかし、膀胱炎になると、排尿時などに痛みがあるためか、逆に水分を摂らなくなってしまう方をおみかけいたします。
細菌を洗い流してしまうためにも、水分を多めに摂り、尿を作ってどんどん排尿するようにしましょう。

急性膀胱炎や一部の慢性膀胱炎などの細菌が原因の膀胱炎の場合、抗生物質の投与が主な治療方法です。
急性膀胱炎の場合、内服薬は4~5日分処方され、飲み始めて1~2日で症状は落ち着き、1週間程で治ります。
慢性膀胱炎は、急性膀胱炎よりも治療は長引きます。
また、抗生物質や抗菌剤の内服を続けていても症状が改善されないことがあります。
慢性膀胱炎では原因となる基礎疾患がある場合があり、基礎疾患の治療も考慮する必要があるからです。詳細は、後ほどお話しいたします。 

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膀胱炎のお薬について

膀胱炎の種類や原因、症状の程度などにより、飲み薬の他にもいろいろな薬剤が使われます。
膀胱炎の多くを占める急性膀胱炎などの細菌性の膀胱炎は、大腸菌によるものがほとんどです。その場合、治療のためには、抗生物質の内服薬が処方されます。腎盂腎炎に及ぶものなど、重篤な場合は注射や点滴で投与されます。

抗生物質には、ニューキノロン系剤、ペニシリン系剤、セフェム系剤などがあります。
特にニューキノロン系剤は、大腸菌に有効な抗菌剤です。
処方された抗菌剤の服用を続けても、症状が改善されない場合は、原因となる菌を検査し、有効な薬を処方し直すこともあります。
また、細菌が原因ではない膀胱炎の場合は、抗菌剤を飲んでいても効果はありません。

その他に膀胱炎のために起こる、頻尿や残尿感、痛みなどの不快感を取り除くために、対症療法薬として次のようなお薬を使うことがあります。
頻尿や残尿感に対しては、抗コリン剤と呼ばれる、よく頻尿の治療に使われるお薬を使う場合があります。膀胱の収縮を抑える薬です。
また、膀胱炎での痛みを和らげるためには、鎮痛剤を使うこともあります。
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 次に、膀胱炎の種類についてお話しいたします。膀胱炎には、大きく分けて、急性膀胱炎と慢性膀胱炎があります。急性膀胱炎は、つよい症状が現れるのに対し、慢性膀胱炎は、症状は軽く、治療に時間がかかることが多いです。初めから慢性的な症状の場合と、急性から慢性になってしまう場合があるようです。 

膀胱炎にはどんな種類があるの?

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急性膀胱炎

急性膀胱炎とは、細菌が原因で起こる膀胱炎です。
一般的に膀胱炎と呼ばれる疾患のほとんどは、この急性膀胱炎だといわれています。
急性膀胱炎は、基礎疾患のない単純性がほとんどです。
女性は必ずかかるといわれるほど、女性に多いです。
急性膀胱炎のほとんどは、細菌感染によるものです。
肛門や膣などの細菌は尿道を通り、膀胱内に侵入してきます。
普通の健康な状態では身体の抵抗力があり、排尿により膀胱内に入った細菌は外に排出されます。
膀胱内に細菌が入ったからといって、必ず膀胱炎になるわけではありません。
ストレスや過労による疲れや、風邪や無理なダイエットなどでの体力消耗、尿意があるのにトイレを我慢する、体の冷えなどにより、抵抗力が落ち、細菌が繁殖・感染することで起こります。
細菌感染により炎症を起こした膀胱は、膀胱炎の症状を出してきます。
排尿の回数は、正常では、昼間に4~5回、夜に1回ですが、急性膀胱炎になると、1日に10回以上もトイレに行きたくなるような頻尿の状態になります。
また、排尿後や終える時にひどい痛みが起こったり、尿が白く濁ったり、血尿が出たりします。
発熱はほとんどありません。
しかし、全身のふるえや高熱が出たり、腰をとんとんと叩くと、右か左の腰に強い痛みを感じるなどの場合は、膀胱炎の悪化したことによる腎盂腎炎などの病気が疑われます。
腎臓と膀胱をつなぐ尿管と呼ばれる管を膀胱側から菌が逆行して腎や腎盂に到達することにより発症しますが、体力や抵抗力の落ちたご高齢の方では、敗血症などの生命にかかわる重篤な状態に移行することも多々あります。
すぐに医療機関を受診しましょう。
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慢性膀胱炎

慢性膀胱炎の場合、症状の初期の段階から慢性膀胱炎という場合と、急性膀胱炎の治療を完全に行わなかったために慢性膀胱炎になる場合もあります。また、尿路結石や糖尿病などの膀胱炎になるためのきっかけや基礎となる疾患がある場合、慢性複雑性膀胱炎と呼ばれるものもあります。
慢性複雑性膀胱炎は、症状は急性膀胱炎とほとんど同じですが、軽い症状で、自覚症状がない場合もあります。
トイレの回数が多い頻尿や、排尿時の軽い痛み、排尿してもすっきりせず、残尿感があるなどの症状が現れます。
原因となる基礎疾患には、前立腺肥大症や膀胱結石、尿路結石、糖尿病、腫瘍などがみられます。例えば、膀胱結石である場合、膀胱内に結石があり、結石には細菌がいるため、膀胱内の細菌の繁殖・感染が長く続きます。何らかの基礎疾患のために、かかりやすく、また治りにくくなっている状態とお考えください。

慢性膀胱炎の治療は、細菌性の場合、急性膀胱炎と同様に、抗生物質を投与します。
急性膀胱炎の場合は、1~2週間で症状は改善しますが、慢性膀胱炎の治療は、長期的になります。しかし、基礎疾患がある場合、大元の原因である基礎疾患の治療を行わないと、根本的な治療にはなりません。
急性膀胱炎を発症した人が、発症、治療を繰り返していると、慢性膀胱炎かな?と思われがちですが、単に、急性膀胱炎を繰り返し起こしているだけということもあります。
しかし、急性膀胱炎を繰り返しているうちに、慢性的に変わってくることもありますので、1回1回しっかりと治療していくことが大切です。

慢性複雑性膀胱炎は細菌性でしたが、非細菌性の慢性膀胱炎もあります。
非細菌性慢性膀胱炎は、原因となる基礎疾患や病原菌が特定できないが、頻尿や残尿感、濁った尿、軽い痛みなどの慢性膀胱炎の症状がみられる膀胱炎です。
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出血性膀胱炎

出血性膀胱炎とは、肉眼で見えるほど尿に血が混じっており、白く濁る膿尿の症状がない膀胱炎で、急性出血性膀胱炎とも呼ばれます。
出血性膀胱炎の原因は、ウィルスや細菌、抗がん剤の投与、食物や薬のアレルギーなどですが、ウィルス性のものが多く、一般的に出血性膀胱炎といえば、ウィルスが原因とされます。
子供がかかりやすく、アデノウィルスによるものが一番多くみられます。アデノウィルスによる出血性膀胱炎では、排尿時に痛みがあり、真っ赤な血尿が出ます。

アデノウィルスに効く薬は今のところ無く、出血性膀胱炎も自然治癒になります。水分を十分に取り安静にすれば、症状は数日で改善され、尿検査の潜血反応も10日ほどでなくなります。

その他の症状としては、残尿感や、微熱程度の発熱がある場合もあります。子供の場合、症状を口で言うことができないことがあります。
トイレに行く様子がおかしい時は、早めに小児科を受診しましょう。
出血性膀胱炎の診断方法は、尿中の赤い色は血液なのかどうかの確認と、膀胱炎の時に出てくる細胞の有無の確認などが行われます。
また、尿のウィルスの種類を検査し、原因となるウィルスを検査することもあります。
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 さて、今まで膀胱炎について詳しくお話してまいりましたが、一番大切なことは、膀胱炎にならないようにする、つまり予防することです。特に、ほかに病気を持っておられない方で頻回に繰り返す場合、生活習慣を見直すことで、膀胱炎になる可能性を減らせることがあります。 最後に、予防法や生活の注意点についてお話ししましょう。 

膀胱炎の予防について

 膀胱炎は、一度なると、繰り返すことが多い病気です。
発症したことのある人は、再発しないように、膀胱炎の経験のない人は、発症しないように予防することが大切です。
膀胱炎の予防として大切なこと、【菌の侵入を防ぐ】、【菌を増やさない】、【身体の抵抗力を落とさない】ことです。

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菌の侵入を防ぐ

膀胱の中に菌を入れないということです。
特に女性は、尿道と膣や肛門が近くにあり、菌が入りやすくなっています。
生理ナプキンやおりものシートは、3時間おきなど、こまめに交換するようにします。
また、外陰部を清潔に保つように心がけ、排便後はお尻を前から後ろへ拭くようにしましょう。

また、ちいさなお子様の膀胱炎については、成長の段階として年齢によっては陰部や性器に興味を持ち始める時期もあり、ついつい触ってしまうことから感染を繰り返すことがあります。
毎日のトイレ・お風呂でのふき方洗い方をしっかり教えてあげましょう。
手指の清潔を心がけ、汚い手では触らないようにしましょう。性行為によって、膀胱炎が引き起こされる場合もあります。

性行為の際、尿道を通って膀胱に侵入し、膀胱炎になる可能性もあります。
行為前には、自分も相手もシャワーを浴び、身体や手指を清潔にし、行為後は排尿する習慣をつけ、尿道や膀胱に入った細菌を排出するようにします。
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菌を増やさない

膀胱内で菌を増やさないということです。
女性の場合、尿意があっても、その場の状況などで、排尿を我慢してしまう傾向が男性よりあります。
その結果、膀胱に入った菌の繁殖が促され、膀胱炎になりやすくなってしまいます。
膀胱の中に入ってしまった菌を外に出すためには、排尿をすることです。
トイレを我慢し、膀胱に尿を溜め込むことを続けていると、尿の中の細菌により、膀胱の炎症をひどくする可能性があります。
トイレは我慢せず、尿意がなくても、3~4時間ごとに、トイレに行く習慣をつけ、膀胱内の細菌を早めに排出するようにします。
また、排尿をスムーズにするためにも、水分をたっぷり摂るようにしましょう。
また、妊娠中に膀胱炎を起こしやすいといわれるのは、子宮からの圧迫により、排尿の働きが鈍るからと言われています。
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身体の抵抗力を落とさない

膀胱炎だけでなく、他のいろいろな病気にならないためも大切なことです。
体力を落とさないためにも、ストレスや無理なダイエット、過労などは避け、身体を健康に保つように心がけましょう。
他にも、冷え性などで下半身が冷えると、膀胱や膀胱の周りの機能が鈍くなり、排尿回数などが少なくなり膀胱炎の起因になることがあります。
膀胱内の粘膜の温度が冷え性などで32℃以下になると、膀胱内に細菌が入ってきた場合、細菌が繁殖・感染しやすい環境になります。
膀胱炎の予防は、日常生活を送る中の、ちょっとした心がけでできることです。
辛い膀胱炎にならないためにも、思いあたることがある人は、改善していきましょう。
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