頻尿・尿失禁

頻尿・尿失禁

普段の会話で、とくに成人女性・御高齢の方の間では、よく尿漏れやトイレが近いという話題がでてくるようですね。 実際に日本では、頻尿・尿失禁の症状を持つ方が40歳以上の男女で約8人に1人の割合といわれています。

ただしそれを、「年のせい」や「別に病気ではない」と思っている人が多いようです。

トイレのないバスや電車に乗ることがとても心配、トイレがあるか確認しないと出かけるのが不安など、

とても切実なお悩みをよくお聞きします。

しかし、その多くは治療をすれば改善する可能性があるのです。

頻尿とは?

トイレへ行く回数は、日中で5~7回、寝ている間は0回が正常といわれています。
日中8回以上トイレに行くことを頻尿、夜間1回以上おしっこのために起きること夜間頻尿といいます。
人前で何度もトイレに行くと恥ずかしいと感じる方が多いですね。
また夜に何度もトイレに行くと、よく眠れないですよね。

尿失禁とは?

尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう病気です。
毎日の生活の中で、次のような症状はありませんか?

 くしゃみや咳、笑ったとき、または立ち上がるときや運動したとき尿漏れしやすい。

 急に尿意を感じて漏れそうな気がする、トイレに間に合わなかったことがある。

 尿の勢いが弱く、排尿に時間がかかる、残尿感がある。

 出産をきっかけに尿漏れを起こすようになった。

御高齢の方では年のせいなどと見過ごしがちですが、若い方でも出産後に漏れが始まる方がおられます。

尿失禁がひどくなると外出を控えがちになったり、トイレをいつも気にしたり、パッド(おむつ)が手放せなくなるなどの、生活の質が下がってしまいます。 

頻尿・尿失禁の原因、種類

頻尿・尿失禁の原因、種類

まず頻尿の原因にはいろいろなタイプがありますが、最近、テレビコマーシャルや健康番組でも取り上げられる機会が多くなってきた、「過活動膀胱」といいう病気があります。

主に以下の様な症状がみられる場合をいいます。

 急に尿意を催し、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)

 トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)

 急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある(切迫性尿失禁)

ある神経の回路に障害が起きると、「膀胱に尿がたまったよ」、「もう出していいよ」といった信号のやりとりが正常にはたらかなくなり、膀胱に尿が少ししかたまっていないのに尿を出したくなったりして、症状が出るのです。少し膀胱が敏感になってしまったイメージです。
過活動膀胱の他には、膀胱の炎症、体の冷え、緊張・心配・不安、または水分の取りすぎなども原因となります。
その原因を、ひとつひとつ問診や検査で調べ、適切な治療をすることが重要です。
症状の感じ方は人それぞれです。
お一人おひとりが、どんなことに困っておられるのかを詳しくお聞きすることがとても大切だと思います。
次に、尿失禁の種類をご説明いたします。身に覚えのあるタイプがあるかもしれませんね。

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腹圧性尿失禁

咳やくしゃみ、大笑いなどお腹に力が入った時に尿が漏れてしまうことを「腹圧性尿失禁」といいます。
尿失禁の中で、女性に最も多い病気です。
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切迫尿失禁

トイレに行きたいと思ったら、我慢できずに尿を漏らしてしまうことを過活動膀胱による尿失禁つまり「切迫性尿失禁」といいます。
これも、女性に多くみられる病気です。
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混合型尿失禁

「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の両方の症状をもっています。
これを「混合型尿失禁」と呼びます。
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溢流性尿失禁

尿道が何らかの理由でつまったり狭くなったりすることで膀胱から尿が出せなくなると、「残尿」が発生し圧迫などにより尿が漏れ出てきます。
これを「溢流性尿失禁」といいます。
排尿が困難であったり、残尿感があったりする場合に疑われる病気です。
男性の場合、前立腺肥大の進行でよくみられますが、女性では膀胱内に大きな瘤ができたり、内臓が骨盤よりも下に落ちたりしてしまう「骨盤臓器脱」の方にみられます。
男女ともに、糖尿病などの基礎疾患や何らかの原因による神経の障害(神経因性膀胱)によって、膀胱の収縮がうまくいかない場合にも生じることがあります。
また、溢流性尿失禁が続くことにより、腎臓の機能の低下、尿路感染症をもたらすことがあるので、注意が必要です。
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機能性尿失禁

認知症が進んでトイレの位置がわからない、歩行が困難でトイレに間に合わないなど排尿の機能は正常にもかかわらず、別の身体精神的な理由で尿を漏らしてしまうことを「機能性尿失禁」といいます。
切迫性尿失禁の症状を重症にさせる因子でもあります。

頻尿・尿失禁の診察、検査

頻尿・尿失禁の検査では一般的な問診に加え、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票という簡単な質問票があります。
これらの質問票が診断のために使われることがあります。
問診以外には、膀胱の状態を調べるための検査を行うこともあります。
排尿に関係した症状があるからといって、必ずしも過活動膀胱とは限りません。
例えば、膀胱がんや膀胱炎などでも頻尿の症状が起こることがあります。
他の病気の可能性も含めて確認するための検査です。
初診で行う検査は、主に、腹部エコー検査、尿検査、残尿量の測定のエコー検査、血液検査などです。
これらは比較的簡単な検査ですので不安がらずに早めに専門医療機関を受診しましょう。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

頻尿・尿失禁の治療

頻尿・尿失禁には、よい治療法があります。

尿失禁や頻尿の原因は様々ですが、大きく分けると、尿を止めておく筋肉の機能低下と、膀胱の収縮を司る神経の異常反応で起こります。

治療はリハビリテーションと薬物治療があります。

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リハビリ

膀胱の収縮や骨盤底筋を鍛えることで、尿失禁を改善する治療です。
日常で行える、骨盤底筋体操(おしっこする、ためるなどにかかわる筋肉を集中的に鍛える)や、膀胱訓練(おしっこを我慢して、おしっこためる量や力を訓練する)がその代表です。
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薬物療法

膀胱の収縮を抑え、神経に働く抗コリン薬が有効です。
このお薬によって、前述したような膀胱に尿が少ししかたまっていないのに尿を出したくなったり、漏れたりする症状を抑えます。
抗コリン薬の代表的な副作用には、口の渇きと便秘があります。
また、抗コリン薬で改善しない患者様が3割程度いるといわれています。
症状と所見にあった東洋医学的治療(漢方)を行うこともあります。
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手術療法

尿道の出口と膀胱の間を、専用の特殊なテープを挿入し、尿道を吊り上げるようにして失禁を減らす手術があります。
TVT手術やTOT手術と呼ばれるものです。前述の尿失禁の種類をもう一度ご覧ください。
この中では、腹圧性尿失禁がよい手術の適応です。
では切迫性尿失禁についてはいかがでしょうか?
膀胱自体に問題があるので、原則は手術適応になりません。
しかし、一部には骨盤の筋肉が弛み、膀胱が下がってきたことが原因で起こるもの(膀胱脱、尿道脱)など場合は、手術が効果的な場合があります。
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最後に・・・

「頻尿」、「尿失禁」は、“年のせい”ではなく、“病気”です。お薬や体操でよくなる可能性があります。排尿のお悩みは、なかなか相談しづらいですよね。
でも、みなさん言えないだけで同じお悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。
年齢のせいだとあきらめずに、まずはお気軽に専門医へご相談ください。